ある時、とっても美人なクライアントのTさんがやってきた。
遠距離恋愛の悩みだという。
心がもやもやしていて、行き場がないのだと。
本当につらそうだった。
でも、ママには意外だった。
ママの所に来る人って、人生の転機を迎えている人とか、
スピリチュアルな世界に開花していく人とか、
あるいはちょっとややこしい問題に直面している人とかが多い。
恋愛の悩みって少ないのだ。
それはきっと、セラピストもそれぞれに役目が違うからだと思う。
Tさんに、なぜヒプノを受けようと思ったの?って聞いてみると、
10年ほど前に、ブライアン・L・ワイス博士の『前世療法』を読んだ
ことがあって、それを思い出したのだという。
同じ職場の人が、この本、面白いよ、って教えてくれたのだとか。
それは布石だったのだと後でわかるんだけど、この時はもちろん
そんなこと、知る由もなかった。
偶然出会った本が、あとあと重要な意味を持ってくることがある。
「ん?逆かな?
必要だから、あらかじめその本に出会っておくんだっけ?」
例えば、ママの場合は、こんな感じ。
ある時、ママの妹が『生きがいの創造』と言う本を送ってきてくれた。
この本、今、職場で流行ってるんだよ、って。
もしかしたら、ママはそのころ、ノイローゼになりそうなほど大変な
問題を抱えていたから、妹は心配して送ってきてくれたのかもしれ
ない。
でも、ママには特にピンとくるものはなかった。
ところが、それから6年後。
ヒプノに出会って、教室に通い始めた矢先、同じ教室の人たちから
「今度の土曜日、飯田 史彦先生の講演会があるから、マサコさん
も行かない?」って誘われた。
『生きがいの創造』は、飯田先生の著書なのだ。
講演会にも行き、
毎週毎週ヒプノをワクワクしながら学んで、
ある時、ふと思いついてもう一度その本を読み返してみたら・・・!
なんと、今勉強しているようなことがぜ~んぶ書いてある!
それもそのはず。
だって、「輪廻転生」や「催眠療法」について書かれた本なんだから。
6年前はちっとも印象に残らなかったのに。
Tさんの場合も、10年前に読んだ『前世療法』が、Tさんをママの
元へと導いた。
ヒプノの説明をしてから、早速セッションに入る。
遠距離恋愛の相手との過去世とかが出てきてくれると近道なんだ
けどなあ、ってママは思った。
でも、こればっかりはやってみないとわからない。
セラピストは所詮、サポート役なのであって、実際はクライアントさん
自身の潜在意識が自分で必要な場面を選ぶので・・・。
自分がくつろげる場所を想像して下さい。そこはどんな所?って
聞いたら、Tさんは、
緑(木)がたくさんある場所、って答えた。
Tさんがこう答えたのにも、ちゃんと意味があっった。
それは後のセッションでわかるんだけど。
「今見るべき必要のある過去世へ」ってママは誘導した。
「足元を見てください」って言ったら、
「真っ暗です」という答えが返ってきた。
これは想定内。
初めてヒプノをやるときって、
本当に見えるかな?って緊張してたりとか、
逆に、何が見えるんだろう?って期待しすぎて、一生懸命左脳を
働かせてしまい、何も見えなかったりすることがある。
せっかくリラクゼーションをやって、身も心もゆったりとリラックスさせ
ているのに、「考える」ことによって左脳を再び働かせてしまうから。
リラックスして、普段使っている左脳は休ませて、右脳が起きてる
というのが理想なんだけどね、ってママは笑いながら言った。
ママ、なんで笑ってるの?
「いやいや、(笑) ママもつい考えてしまうタイプだからさ」
ママは好奇心が強すぎるらしい。
だから、仲間とセッションをやっていて、
「では、ガイドさんからメッセージをもらって下さい」って言われると、
どんなメッセージをくれるんだろう?ってワクワクしたり、
「それは何故なのか、理由を聞いてください」と言われても、
何故なんだろう?って、ちらっと自分の左脳で考えたりしてしまう。
「そうすると、駄目なんだよね~。
だって、それって、いつもの自分の顕在意識で考えてしまってるわ
けでしょう?
潜在意識と繋がらなくなっちゃうんだよね」
さて、Tさんの場合。
緊張しているのかもしれないと思って、ママはあの手この手で誘導
してみたけど、真っ暗なままだった。
サブパーソナリティを呼んでみても、誰も現れない。
今の気持ちを聞いても、
何も感じない、わからない、という返事。
時間をかけてゆっくり進めてみるが、何も出てこない。
インナーチャイルドに会いに行ってみるが、木の扉まではイメージで
きたものの、息苦しいと言うので、中には入らなかった。
こんなに何も見えないのは初めてだった。
緊張だけなら、いろんな誘導を続けることで、断片的に潜在意識に
繋がったりして、途切れ途切れでも何らかの感触を掴めるようにな
る。(ことがほとんどだった)
ママは最後に「イデオモーター・シグナル」をやってみた。
筋肉反射を使って、潜在意識から答えをもらう方法である。
手の指を使う。
質問に対して、YESやNOの答えを、指が勝手に動いて教えてくれる。
本当に自分の意志に関係なく勝手に動くので、友達もクライアント
さんもみんな、口を揃えて「おもしろ~い!」と言う。
Tさんがヒプノで何も見えないわけを聞いてみた。
今は見る必要がないからなのか、
緊張しているからなのか、
思いつく限りのことを聞いていく。
NOという答えが続く中、
彼女自身のブロックですか?の質問では指がイエスと動いた。
そして、彼女が見る必要があるのは、過去世なのか、サブパーソ
ナリティなのか、幼児期退行なのかと聞いていくと、
インナーチャイルドでイエスになった。
ママはやっぱり、と思った。
カウンセリングのときに、Tさんが幼稚園は途中で辞めたこと、
小2まで登校拒否だったことを話してくれたからである。
そして、人を信用しない、疑い深い性格だと言った。
これは言葉通りではない気がしたけど、Tさんは「心が固い」かも
しれないなあとママは思った。
だとしたら、そうなった理由が必ずあるはず、って。
2度目のセッション。
水が見えた。
水の上を進んでいくと、建物が見える。
その建物に入ってみますか?
はい・・・。
石造りのトンネルを抜けると入口があるみたい・・・。
では、そのトンネルを抜けて、と誘導している最中に、
「だんだん見えなくなってきました・・・」とTさん。
そして、ほどなく、暗くなってしまった。
以後、どうやっても何も出てこない。
いろいろ試したが、駄目だった。
ヒプノが初めてのときは、見えたものにびっくりして、
「これ、何だろう? 私が自分で想像してるのかな?」と考えてしま
う人も多い。
その瞬間、カチッとスイッチが入って顕在意識に入れ替わり、せっかく見えて
いたものが消えてしまう。
見えたものをそのまま受け入れればいいんだけど、やっぱり初めて
のときって不思議に思うから、
「これ、なんだろう?」って思っちゃったりする。
でも、ヒプノも「慣れ」だから、回数を重ねると、だんだん「見る」こと
が上手になっていくんだって。
本当に見えるのかな?とか、
見えなかったらどうしよう、とか、
どんな風に見えるんだろう?とか、そういうことをな~んにも考えな
い、あっけらかんとした人は初回からすんなり見えることが多い。
でも、こればっかりは性格だからね、ってママ。
「よく”瞑想”でも、”無になる”っていうけど、雑念が湧いてきて、
無になれないっていう人、多いでしょう?」
ママは催眠と瞑想って同じようなものなんじゃないかと思ってる。
要は、変性意識状態になっているだけだと。
(この時、脳波はα波になる)
瞑想をやる人は、自分で「無の境地」、つまり変性意識状態になれ
る。
一方、催眠はセラピストが言葉で誘導しながら変性意識状態に導く。
潜在意識に繋がるという意味ではどちらも同じ気がする。
例えば、りんごが木から落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見
したニュートンは、いつも瞑想をしているときにひらめいていたと言わ
れている。
「閃き」ってどこからくるのかいうと、潜在意識からなんだよね~って
ママは言った。
Tさんは、セッションが終わった後に、
「最後に一瞬、ヨーロッパの街並みが見えた」と言った。
そして、ある家の窓越しに、男の人が見えたと。
その人はスーツを着て、椅子に座っていたんだって。
とてもはっきり見えた、と。
ママはそれを聞いてちょっと残念に思った。
セッション中に見えたことや感じたことをその場で口に出して言って
もらえると、場面を展開できる可能性が高い。
なぜか催眠中って受動的になっているから、セラピストが
「それを見て、どう感じますか?」とか
「ほかに何が見えますか?」とか質問をしていくことで、ストーリー
が進んだり、視野が広がったりしていく。
でも、今日はきっとこれで良かったんだ、とママは思うことにした。
せっかくセッションをやるんだから、少しでも多くのものを見せてあげ
たいと、つい意気込んでしまいそうになるんだけど、
潜在意識につながっているクライアントさん自身の意識は違う次元
に飛んでいるので、慣れていないうちは、あまり時間をかけすぎると
疲れてしまう。
それに、Tさんの場合は、見えない理由は、「慣れ」とか、左脳を働
かせるからではなくて、心のブロックだと思われた。
そうだ!
ママは、いいことを思いついた。
Tさんに、ダウジングとオラクルカードのやり方を教えてあげよう!
どちらも、潜在意識と繋がる訓練になる。
自分の潜在意識と仲良くなれば、アクセスしやすくなるはず・・・。
ママはユーリさんのセッションを受けた時、ダウジングを教えてもら
ったんだって。
マサコさんはハイヤーセルフと繋がってるみたいだから、って。
そのとき、北向き法とダウジングの両方を説明してくれた。
「北向き法っていうのはね、北を向いて立つの。
何かを質問すると、YESなら、体が前に傾くし、NOなら後ろに傾く
の」
ダウジングは、ユーリさんは古銭のようなものに紐を通して使って
いた。5円玉でも何でもいいよ、って。
要は、チェーンや紐の先に石や5円玉のようなおもりをつけて、振り
子を作るらしい。
(ペンデュラムという専用の道具もある)
YESかNOで答えられる質問をすると、5円玉が縦横に揺れたり、
くるくる回ったりして答えてくれる。
ユーリさんがやり方を教えてくれて、「やってみて下さい」と渡され
たけど、ママは自分がやっても動くのか自信がなくて躊躇した。
すると、ユーリさんがクスッと笑って、
「私は席をはずすから」と部屋を出て行った。
おそるおそる紐を持ってぶら下げる。
教えてもらったようにやってみる・・・・。
ちゃんと動いた!
その日からママは毎日のようにダウジングをやっていた。
まるで子供が新しいおもちゃを与えられたかのように、面白い、
面白い、って夢中になっていた。
質問の答えはどこから来るの?
「う~ん・・・それは、たぶん、潜在意識?」
検証のしようはないけど、潜在意識に繋がるツールじゃないかな。
というわけで、ママは判断に迷ったりすると、いつもダウジングを
やっていた。
「あのね、エフちゃん、仕事中に、今このお客さんに電話をする
べきかどうかって迷ったときなんてね、綴じ紐の先に目玉クリップを
つけて、机の下でそおっとやってみたこともあるの! (笑) 」
ママは今はヒプノやシータができるし、メッセージも受け取れたりす
るから、あまりダウジングはやらなくなったけど、ヒプノに出会うまで
は、本当にお世話になったんだって。
ある時は、旅行に行く日程、航空会社、飛行機の時刻に至るまで
ダウジングで決めたこともある。
「どちらかというと、おおざっぱじゃない性格の方が向くかも」
そうなの?
「うん。たとえば、このセミナーに行った方が良いですか?って聞く
とするでしょう? NOとでたら、おおざっぱな人は、行かない方が
いいんだ~、で終わっちゃうの。
細かい性格だと、なぜ?って聞いていく。
楽しめないから? 何も得られないから? 一人でなくて、友達と
行くとしたら?とか。角度や視点を変えてあれこれ聞いていくと、
自分が納得できる理由まで辿り着くの」
どんなツールでも、向き不向きがあるらしい。
「オラクルカードは、ほら、いつかミミさんに教わったでしょう?
それをそのまま教えてあげてるの」
北向き法でも、ダウジングでも、カードでも、Oリングでも、何でも
いいんだけど、こう言った方法を使って、常日ごろから自分の潜在
意識に繋がる場数を踏んでいると、ヒプノにも有効な気がする、って
ママは言った。
自分の潜在意識と仲良くしておくことだよね、って。
Tさんは、早速カードを購入したと連絡をくれた。
レイキのアチューメントも受けることになった。
Tさんは魂がとてもピュアだったから、アチューメントを受けてエネル
ギーの回路が開いたら、きっとすごく潜在意識に繋がるようになる
だろうな、ってママは思った。
そして、その予想通り、Tさんは目に見えて変わっていった。
Tさんがレイキのアチューメントを受けたのは、最初にセッションを受
けてから約1か月後だった。
椅子に座っているTさんの背後に立つと、
「後ろから紫色の光が広がってきた」と言ったので、ママはびっくり
した。
ヒプノセラピーを受けているときに、光が見えることがあるんだけど、
その光の色にはそれぞれ意味があるらしい。
榊先生が、紫色の光は、「時空を超える」光だって言ってたのをママ
は思い出していた。
アチューメントの途中で、今度はTさんの前に立つ。
すると、「マサコさんが前に立つと、金色の光が現れる」と言った。
アチューメントは、受ける人の頭、額、肩などに数分間ずつ手を置い
て、エネルギーの回路を開いていく。
同じ動作を繰り返し行う。
「何度目だったかな・・・。
Tさんの前に立った時、ママにも金色の光が感じられたの!
あのね、そこに立ってるのは、ママではなくて、金色の人型をした光
だった」
んんん・・・? どういうこと?
「ママは目をつぶって集中してたんだけど、その時、自分の場所に
別のものが立っている気配がしたの。
それで、ああ、やっぱり、”人間”は、媒体なんだって思った。
だって、アチューメントをしてるのは、ママではなくて、その金色の
光(の人?)だったもん」
それから、アチューメントの最中に、一瞬、Tさんの過去世らしきもの
がふっと見えた。
お姫様のような着物姿で、神社を訪れていた。
この過去世とは別の時代だとは思うけど、ママとTさんはかつて
姉妹だったような気もした。
アチューメントは無事終了し、ママはレイキの使い方を説明した。
アチューメントっていったって、体の数か所に手を置くだけだから、
本当にこんなことでレイキが使えるようになるんだろうか?って
最初は半信半疑だと思う。
ママは、アチューメントの前に、
お酢を入れた小皿を二つ並べ、片方に手をかざしてレイキを流し、
まろやかな味に変わるのを確認してもらっていた。
「本当だ!味が変わってる!」ってTさんはびっくりしてたけど、
「もう同じことが出来るから、家に帰ったら試してみてね」って言った。
その夜、Tさんからメールが来た。
お酢がなかったので、お醤油でやってみました!
ビックリです!
本当にまろやかになりました!
レイキをやってない方を後で舐めたら、そっちはしょっぱかったです!
2週間後に再びレイキのアチューメントをやって、ファースト、セカ
ンド、サードの3段階が終わった。
レイキ整体の説明をする。
レイキ、つまりハンドヒーリングを用いて、体のエネルギーを整えて
いく。
クライアントさんには順に仰向け、うつ伏せになってもらい、頭から
足の先まで、ハンドヒーリングを行っていく。
「これが、すっごく気持ちいいの。
手を当ててもらったところは暖かくて、体中がぽかぽかしてきて
至福のひとときなんだ」って、ママは言った。
合わせて、オーラのクリーニングも行う。
いつでも、どこでもレイきは使えるから、自分にもどんどん使ってね、
ってママが言うと、Tさんはにこにこして、「ハイッ」って答えたんだ
けど、その笑顔を見ながら、
「Tさん、顔つきが変わったなあ」って、ママは思ったんだって。
明るくなって、きらきら輝いている。
「そういえば、遠距離恋愛はどうなったの?」って聞いたら、
「あ! 忘れてました」って。 (笑)
カードも大活躍らしく、(購入して)一番最初に『執着』という内容の
カードを引いたんだって。
Tさんいわく、彼のことを忘れたわけではないけど、以前のような強
い「執着」がなくなって、自分が楽になったんだって。
すごいね。
最初にセッションに来てから、まだ2か月も経ってないのに!
数日後にTさんからメールが来た。
職場の人からも、最近、雰囲気が変わったね!って言ってもらえ
ました、って。
嬉しい報告だなあ・・・って、ママはとても喜んでいた。
でも、実はTさんとのお付き合いは、ここからまだまだ続いていく
ことになる。
そして、それこそが、Tさんが千年も、いや二千年近くも前から決め
ていた人生のシナリオだった。
セッションの後、いつものようにワンちゃんと一緒に駅まで送って
行った。
その道すがら、Tさんといろんな話をした。
ママは何気なく、「もっと経験値を積んだら、ヒプノを教えたい」と
言った。
そしたら、Tさんが、
「ヒプノ教えるんですか? 私、習いたいです!」と言ったので、
ママはびっくりした。
ヒプノでいろんなことがばっちり見えて、「わ~、すごい」と感動して、
自分も勉強したい、っていう流れならわかるんだけど・・・。
Tさんの場合は3回とも、あんまり見えなかったにも関わらず、習い
たいって言ったから。
でも・・・・・。
「教えるときは、是非声をかけて下さい!」
Tさんは本気のようだった。
「本当に?」
「はいっ! 習いたいです!」
ママはなんだか背中を押された形で、
「じゃあ、やってみる?」って。
意外な展開になった。
「あのね、エフちゃん、毎月仲間と勉強会をやってたでしょう?
Tさんが習いたい、って言ったのは、ちょうど最後の勉強会が終わっ
た直後だったの」
ひょんなことから勉強会が始まり、それは1月から12月まで、1年
間続いた。
忘れもしない、5回目の勉強会の日。
ママは、みんなが帰った後、「ああ、今日も本当に楽しかったな」っ
て思いながら後片付けをしていた。
すると、突然、姫しゃらの木からメッセージが来た。
”あなたは、みんなのために勉強会をやっていると思っているが、
実は、みんなはあなたに協力してくれている。
あなたがいずれ教える立場になったとき、いろんなことにぶつかる。
○○先生、然り、だろう?
(注:この頃、身近に独立してヒプノを教え始めた人がいたが、
思うようにいっていないようだった。
予想もしていなかった問題が次々に出てきているらしかった)
だから、今、みんなが協力してくれているのだ ”
確かに、気の合った仲間同士が集まっているとはいえ、何も問題が
ないわけではなかった。
たとえば、遅刻してくることに対してはどうするのか、
テーマを決めていても、その内容に興味のある人とない人が居た
場合にはどうするのか、
時間配分はどうするのか、等々、実際にスタートしてみると、それな
りに考えなければならないことが出てくる。
だいたい勉強会の1週間位前になると、ママは何をテーマにやれば
いいのかが閃く。
だけど、その内容と、みんながやりたいことに、ズレが生じることだ
ってあるのだ。
姫しゃらの木は、それに対して、
” 一方的にやってはダメだ。メニューを作りなさい。
そして、みんなに「今日はどれをやりたい?」と選択させるようにし
なさい ”とアドバイスしてくれた。
” そのように、いろいろ試しなさい。
(今のうちに)なんでも試してみなさい、思いつくままに。
みんなはそのために協力してくれているのだから。
ママは胸が一杯になった。
そうだったんだ・・・。
みんなは生徒役をやってくれていたんだ・・・。
姫しゃらの木は、最後にこう言った。
”だから毎回、(勉強会が)終わったら、心の中でみんなにありがと
うを言いなさい ”
ええっと、つまり、勉強会は、いずれヒプノを教える時の、予行演習
のようなもの、ってこと?
「そういうことみたい・・・」
「エフちゃん、あのね、植物からメッセージがくるときって、どうも
二通りあるような気がするの」
二通り?
「うん。植物の精霊が話しているときと、植物を媒体にして上から
メッセージがくるとき」
ママはさっきのメッセージは上から来たと言った。
「上からくるときは、おじいさんのようなしゃべいり方なんだよね」
でも、もちろん、あんなに長々としゃべったわけではない。
人間が言葉で話すのとは違う。
何が違うの?
「時間、かな。あれだけのことをしゃべっているけど、実際受け取る
ときは一瞬なんだよね」
その一瞬の、感じとったことを言葉にするとあんな風になるの、
とママは言った。
それって、次元の違い? 次元が違うと時間の感覚が違うから?
ママはぶつぶつとひとりごとを言っていた。 (笑)
「ヒプノのセッションを受けたクライアントさんはね、終わった後にみ
んな驚くんだよ。
セッションは、1時間半~2時間ぐらいやるでしょう?
それなのに、”え~っ?30分ぐらいかと思った!”って」
ママが初めてヒプノを受けた時もそうだったんだって。
潜在意識の中にいるとき、つまり脳が変性意識状態になっている
ときって、時間の経ち方が、この三次元とは違うみたい。
「メッセージがくるときっていうのは、三次元より上の次元から
くるわけでしょう? だから降ってくる時間は一瞬なんだけど、その
内容を理解するときは、三次元の言葉に変換するから、なが~く
なっちゃうんだよね、きっと」
そして、ママは、「あっ!」と言った。
うまい例えが、みつかったよ!って。
「あのね、真空パックでぺたんこになったスポンジ(やタオル)が
上からふってくるの。
それを三次元の世界で、みんなに見せようと思って開けると、たち
まち膨らんで何倍もの大きさになっちゃうの!」
それで、勉強会の話はどうなったんだっけ?
「あ、そうそう。
えっとね、そもそも勉強会を始めたのは偶然の成り行きだったの。
ひとつめのヒプノの教室を卒業した年の暮れに、忘年会をやろうって
いう話になって」
うん、それで6人が集まったんだよね?
「そう。
それでね、忘年会は夕方からだったから、その前にセッションを
やろうということになって」
ミミさんとセッションをやることになった。
その時に、ミミさんがオラクルカードを持ってきて、ママのことを見て
くれた。
(注: ミミさんはプロの占い師でもある)
彼女は霊感があるので、カードからいろんなことを読み取れる。
『魔法のカード』が出たよ、ってミミさんが言った。
それは何を意味しているの?
『あなたは力を与えられている。だから、それを使いなさい』っていう
意味だよ。
ふうん・・・・。
ママにはピンとこなかった。
ミミさんのように生まれつき霊感があるわけでもないし、いたって
普通だしなあ・・・。
ミミさんは続けてこう言った。
ここ何日間の短い間に、繰り返し繰り返し、同じ言葉を見たり聞いた
りするよ。それはサインだから、気づいてね、って。
繰り返し同じ言葉を?
でも、そんなこと、起きてないよ。
うん、このあとの忘年会でそれがわかるかもしれないしね。
え~っ? そんなこと、あるかなあ・・・・。
(ママは信じていなかった )
忘年会の会場に向かう道すがら、ミミさんが、
これから力がどんどん強くなっていくけど、傲慢にならないことが
大事、って(上が)言ってるよ、と言った。
え? 傲慢になるほどの力が与えられるの?ってママは期待した
んだって。
「でも、いまだにそうなってないね~」 (笑)
「実はね、忘年会のときだけじゃなくて、その頃、なぜかみんなが
ママの話をすご~く聞いてくれるようになってたの」
仕事関係で会う人たちも、明らかに、耳の傾け方が今までと違う。
真剣にママの話を聞いている。
「話がわかりやすい」
「話しがストンと入る」
「話が上手」
なんで? 今までと同じように話しているのに?
ママは不思議で不思議でしょうがない。
それって、どんな内容の話のとき?
「う~ん、そうだねえ・・・・、何か相談をされた時とか・・・・、
ちょっとしたアドバイスを求められたときとか・・・・」
「耳」で聞いているというよりも、極端な言い方をすると、「心」で
受け止めながら聞いてくれているような感じ。
「何故なんだろう?」って、ママはミミさんにメールで聞いた。
そしたら、こんな返事がきた。
「それはね、マサコさんが目覚めたからだよ。
自分の自尊心が喜んだり満足するためじゃなくて、本当の
意味で、人のためになろうとしてるってことだよ。
神様(と呼ばれてる方)がマサコさんを応援してるんだよ。
おめでとう!
天使たちから認められたんだね!」
ママが飛び上がって喜んだのは言うまでもない。(笑)
「ミミさんはね、忘年会の1か月前にもママのことを視てくれたの」
そして、こう言った。
「マサコさんは、スピリチュアルな仕事をするために生まれてきてい
るね」
「頭の上から光が2本出ていて、1本はまっすぐ、1本は螺旋状に
なってる。その螺旋状がまっすぐになると、もっと上に繋がるよ」
1週間後。
2回目のレッスンの日。
「この1週間で、”子供”のカードが3回も出たんです。なんでかなあ
・・・・」って、Tさんが言ったので、ママはびっくりした。
(Tさんは初めてヒプノを受けにきたときに、ママからオラクルカード
の使い方を教わり、自分でも購入して使っていた)
その日は「幼児期退行」をやる予定だったから。
44枚の中で3回も同じカードが続けて出るなんてすごい。
Tさんは自分では気づいていないようだったけど、ママには彼女の
能力がどんどん開いているのがわかっていた。
レイキでエネルギーの回路が開いたのも影響しているのかもしれな
い。
それに、純粋な人は、潜在意識と繋がるようになるのが早い。
シャワーを浴びているときに、突然、天使からメーッセージがきたと
も言っていた。
きっと、Tさんはカードとの相性もいいのだろう。
「オラクルカードって不思議なんだよ~。
44枚あるんだけど、何か月続けても、一度も引くことのないカードも
あれば、何度も何度も繰り返し出てくるカードがあったりするの!」
ミミさんに教わったときに、その話は聞いていたが、試しに1か月間、
出たカードをノートに付けてみたら、本当に、数枚のカードだけが、
繰り返し出てきていて驚いたことがある。
一緒に教わった仲間たちも、報告し合ったら、同じことを言っていた。
「カードはメッセージだからね~。
必要な間は同じメッセージを送り続けるのかもね・・・」
さて、Tさんの幼児期退行。
最初は楽しい場面を見に行ってもらう。
賞状が見えると言った。
そろばん検定の合格証らしい。
嬉しかったからその場面が見えたのかと思ったのに、
「どんな気持ちですか?」って聞いたら、意に反して
「特には、何も・・・・」って。
そろばんもあまり好きではないと言った。
そして、ここから何も見えなくなってしまった。
う~ん・・・・、困った。 どうしよう・・・。
苦肉の策で、子供の頃の印象的な場面を、自分で思い出してもら
うことにする。
なんでもいいから・・・。
そしたら、悲しい場面が出てきた。
幼稚園でみんなから仲間はずれにされている場面。
とっても意地悪な子がいて、Tさんが標的にされていたのだという。
幼稚園でその子と会うのがすごく嫌だった、とTさんは言った。
その子に何か言いたいことがある?と聞くと、
「なんで意地悪するの?」と。
じゃあ、その時言えなかったその言葉を、今、言ってみましょう、と
ママは促した。
少し時間をおいてから、今度は小学校で印象に残っていることを思
い出してみて下さい、と言った。
それはどんな場面ですか?
すると・・・。
「いつも仲間はずれにされてるのに、(ある日、お昼休みに)一緒に
外で遊ぼうって誘ってくれて・・・・。
外に行ったら、みんなが私の周りを円になって取り囲んで、私が
そこから出られないようにして、そして、私の周りをぐるぐる回って
・・・・、私は嫌なのに・・・」
ママは切なくなった。
ママとにこにこ笑顔で話しているTさんに、こんな子供時代があった
とは想像もつかなかった。
カウンセリングのときに、幼稚園を途中で辞めたことや、小2まで
登校拒否だったことを話してくれたが、このいじめが原因だったの
かもしれない。
ところが、ママが、みんなに取り囲まれているTさんに、
「今、どんな気持ちですか?」と聞くと、驚いたことに、
「別に」という返事が返ってきた。
嘘をつかれたと思ってる、と。
幼い子供がこんな目に会っているのに、
泣きたいほど悲しいとか、つらいとか、悔しいとか、そういった感情
はないのだろうか・・・。
覚醒後、お母さんにはその出来事を話したの?って聞いてみる。
「話したけど、”あんたも悪い”って言われた」
ああ、そうか・・・・。
助けを求める先がなくて、彼女は、感情を閉じ込めてしまったんだ。
悲しいとか、つらいとか、「感じない」ように。
セッション中に、今の気持ちは?って聞くたびに、
「何も」「別に」「特には」と答えるTさんを不思議に思っていたけど、
心が固くなった理由のひとつが、何となくわかった気がした。
最初のセッションの後、筋肉反射で、Tさんに必要なのはインナー
チャイルドのセッションという反応が出たけど、その通りだったのだ。
もし初回の遠距離恋愛のセッションだけで終わっていたら、この心
の闇は見えずじまいだったことだろう。
3回目のレッスンでは、インナーチャイルドの勉強をした。
リラクゼーションをやってから、インナーチャイルドに会いに行く
誘導をする。
お部屋をイメージして、その中にインナーチャイルドがいるという
設定にしてみるが、部屋の扉までは見えたものの、鍵がかか
っていて入れない。
扉が鉄で出来ている、
鍵がかかっている、
扉にノブがなくて開けられない、等々。
こんなときは部屋に入れない。
ここで、本人の気持ちを聞いてみる。
部屋に入りたいかどうか。
Tさんは入りたくないと言った。
う~ん・・・・。
さて、ここからどうしよう・・・。
こうなったら、もうイメージしかない。
5歳位の自分を思い描いてもらうことにする。
しばらくすると、Tさんが幼稚園の制服を着た小さい自分の姿を
イメージできたと言った。
「エフちゃん、ここからが面白いんだよ。
単に小さいときの記憶を思い出してるだけだと思うでしょ?」
うん。違うの?
「違うの! あのね、そのとき、ママはこう言ったの」
その小さい自分を見て下さい。その子に何かしてあげたいこと、
ある? 何かかけてあげたい言葉がある?って。
そしたら、Tさんは、思わず、
「大丈夫だよ、強くなれるからね」って言った。
そして、その子を抱きしめた。
そうだ、これでいいんだ、ってママは思った。
催眠で「見える」っていうと、何かの映像が勝手に見えてくると
思っている人は多い。
そして、いつまで待っていても何も見えてこないと、
「見えなかった」って。
だけど、こんな風に、自分からイメージを呼び出すこともできる。
「不思議なんだよ、例えば、自分の子供の時の姿を思い出すとする
でしょう? 自分で思い出したはずのその子が、しゃべり始めたり
するの」
本当に?
「うん。その子の顔を見て下さい。どんな表情をしてますか?
あなたに何か言ってる?って聞くと、
にっこり笑って私の手を握ってきたとか、ね。
会話もできたりするんだよ」
そう。
静止画でイメージした子供が、いつの間にか動画の世界で
主役を演じている。
これはママにとっても、面白い発見だった。
そして、次のレッスンでは、さらに面白いことが起きた。
ママはもう一度、インナーチャイルドの誘導をしてみた。
「そしたらね、今度は部屋の中に入れたの!
木の扉を開けて中へ入ると、暗かったんだけど、ちゃんと女の子
がいたの」
しかも、前回、幼稚園児だったその子は、成長して小学生になって
いた。
「その子はTさんを見て、どんな表情をしてる?」と聞いてみる。
不安そうにしてます・・・。
「あなたは? 」って聞くと、Tさんは、「ドキドキしてる」と答えた。
Tさんが、「大丈夫だよ」と声をかけると、その子は少し嬉しそうに
笑った。
そして、「何かして欲しいことがある?」って聞くと、
「ひとりぼっちでいたくない。
(Tさんと)一緒にいられれば、それでいい」と答えた。
前回のレッスンではインナーチャイルドに会うことができなかった。
それで、
ママは、次のレッスンまでの間、毎晩寝る前に3歳位の自分を
イメージして、その子に「大好き」とか、「生まれてきてくれてありが
とう」とか、「いままで気づかなくてごめんね」とか、思いつく言葉
を言いいながら抱きしめてあげてね、とアドバイスした。
確か、精神科の越智啓子先生の本に、そうやってインナーチャイル
ドを癒すことができると書いてあったから。
ぬいぐるみや人形があったら、それを自分のインナーチャイルドの
代用にしてもいいとのことだった。
「Tさんが毎晩寝る前にあなたを抱きしめていること、気づいてた?」
って、ママはその子に聞いてみる。
すると、「うん!」と嬉しそうに返事をするではないか・・・!
すごい・・・やっぱり通じてるんだ・・・。
Tさんは「これからも続けるね」って言った。
そもそも、「インナーチャイルド」とは、アメリカの心理学で
使われている言葉で、「内なる自分」と訳されるらしい。
自分の中の子供の部分の象徴。
子どもの頃って、自然で、無邪気で、感性豊かで、伸び伸びとして
いて、好奇心も遊び心もいっぱいで・・・・
でも、成長する過程で起きた出来事、そしてそれに伴って傷ついた
り、悲しかったりした心はそのまま自分の中に住みついていく。
その「傷ついたままの子供」は、大人になった自分にも影響を与え
る。人間関係や、いろんな行動パターンにおいて。
たとえば、小さい頃、親に、「お前は本当に馬鹿だな」と笑われたこ
とが、心に「劣等感」「羞恥心」などの感情として残り、大人になって
も自分のことを過小評価したり、自己否定してしまったりするとか。
セッションをやっていて多いのは、「親の愛情に飢えている」ケース。
親に甘えられなかった、我慢していたなど。
「親に愛されたい」という気持ちは、大人になっても、
例え自分が家庭を持っても、消えることはないように思う。
小さい頃の「愛を欲しがる自分」がそのまま、心の中に住み続けて
いる。
「だけど、それに気づかない人は、いっぱいいる」ってママは言った。
そういう気持ちにフタをして生きているからなんだって。
「小さい頃のことだから、顕在意識では忘れてしまっていることも
あるし、それに、フタをしないと生きていけない部分もあるよね」
でも、そういった「閉じ込められた」心を癒し、解放してあげると、
生きていくエネルギーが変わるみたいよ、って、ママ。
いつも漠然とした不安に襲われていたのがなくなったとか、
何をしても満たされなかった心が消えて、人生を楽しめるように
なったとか、自分のことを好きになれたとか。
あるいは、親との確執がなくなったとか。
Tさんが毎晩インナーチャイルドを抱きしめ、愛のある言葉をかけて
あげることで、Tさんの固かった心が少しずつほぐれていったんじゃ
ないかなあってママは思った。
ええっと・・・、つまり「心が固かった」のは、Tさんではなくて、Tさん
の中の「インナーチャイルド」だったってこと?
「うん、そうじゃないかと思う」
小さいときの感情、って、そんなに残り続けるものなの?
「たとえばさ、子供の頃、みんなでリカちゃん人形で遊んでいたと
するでしょう?
でも、自分だけは親が”そんなもの必要ありません”って、買って
くれなかったとするじゃない?
集まって遊ぶたびに、自分だけ持ってないのが悲しくて、
”私も欲しい”って思いながら、でも、我慢するしかないわけ。
で、高校生になってバイトできるようになって、自分の欲しいものを
買えるようになった。リカちゃん人形を買う。
それで、その子の気持ちが満たされるかな?」
いや・・・・。だって、高校生になってから手に入ったって・・・・。
「でしょう? 高校生になってから手に入れても、小さかった頃、
みんなで遊ぶ、その時に欲しかった気持ちは満たされないのよ。
だから小さかった頃に戻って、その時点での気持ちを癒してあげ
るわけ」
たとえば、親に対してもそうなの、ってママは言った。
「ある人がね、小さい頃、お母さんが出かけるときに、妹は連れて
行ったのに、自分のことは、”お姉ちゃんだからお留守番できるよね
?”って置いて行かれたんだって」
ほんの数時間のことだったらしい。
妹は赤ちゃんで手がかかるので、お母さんにしたら、お姉ちゃんだ
けでもお留守番していてくれたら助かると思ってのことだろう。
でも、彼女は、ひとりでお留守番するのが心細くて、寂しくてたまら
なかった。
「お姉ちゃんだから・・・、できるよね?」って言われて我慢したけど。
セッションでその場面に戻った時、彼女に、「どうしたい?」って
聞いたら、
「私も連れて行って!」って泣きながら言った。
そう。
あのとき、彼女は我慢したけど、本当はこう言いたかったんだ。
その「我慢した気持ち」を吐き出すだけで、心が楽になる。
そして、ヒプノでは、何でもできるから、その時に戻ってお母さんが、
「気が付かなくてごめんね」って抱きしめてくれたりすると、
小さかった時の彼女の心がとっても癒される。
そうすると?
「うん、人によって違うんだけど、たとえば、いつも心の奥でもやもや
と満たされない気持ちがあったのが、いつのまにかなくなって、
なんだか元気が出たりとか、変化がおきるんだよね」
「あ、でもね、インナーチャイルドって、必ずしも、”傷ついた内なる
子供”とは限らないんだって」
「自分の中の活発な部分の象徴として、クライアントさんが女性であ
るにも関わらず、男の子が出てきたりとか、自分を勇気付けてくれ
る子が出てきたりとか、いろんなケースがあるって、榊先生は言っ
てたよ」
ママが、教室で練習した時も、面白いインナーチャイルドが出て
きたのだとか。
まず、インナーチャイルドが居る部屋の前に行ったんだけど、
薄いベーシュ色のとてもきれいな扉があった。
そして金色の丸いドアノブに、白い十字架が(短いチェーンで)ぶら
下げられていた。
十字架には、たくさんのダイヤが等間隔に埋め込まれてい
て、キラキラと輝きを放っていた。
ママは視覚派ではないので、セッション中に何かが見えても
ぼんやりしていることが多いのだけれど、この十字架だ
けは、くっきりと見えた。
次の瞬間、部屋の内側からドアがそ~っと開いて、
白いひらひらの服を着た5歳くらいの女の子が、恥ずかし
そうに顔を覗かせたかと思うと、パタン!とドアを閉めた。
で、ママがドアを開けると、中はまっくら・・・。
その女の子は隠れているみたい。
ママが、「どこにいるの?」って聞いたら、「ふふふ・・」って
笑い声が聞こえた。
姿は見えないんだけど・・・・。
「姿を見せて頂戴?」とお願いすると、部屋の電気がパッと
点いて、明るくなった。
そして、その女の子は目の前にいた。
おかっぱ頭で、白いワンピースを着ていて、にこにこ笑っ
ている。すごく明るくてお茶目な感じ。
セラピストに促されて、
「こんにちは。私は、大人のあなただよ」と挨拶をすると、
女の子は、「うん、知ってるよ」と言ってにっこり笑った。
「その子に会って、今、どんな気持ちですか?」ってセラピ
ストが聞いてくれる。
懐かしい気がする・・・。
翌日、Tさんからメールが来た。
「昨日、帰ってから面白いことがあったんです!」と書かれていた。
布団に入って暫くしたら、携帯が鳴ったんだそう。
ワン切りだったんだけど、着歴をみたら、お姉さんからだった。
滅多に連絡が来ることがないので「なんだろう」と思い
折り返してみたけど、出なかった。
しばらくしたら、お姉さんからメールが来たんだって。
「携帯を変えたから番号登録をしてたら、間違えて、発信を押しちゃ
った!」って。
昼間、胎児期退行をやってお姉さんの気持ちを感じた
ばかりだったので、偶然にしても、タイミングが良すぎる
なあって・・・。
そして、翌朝、Tさんの心にある変化が起きた。
「子供のころは喧嘩ばかりしていたし、私自身、(優等
生の)姉に対して嫉妬があったけど、私が生まれて来るこ
とを楽しみにしてくれてたんだなぁって思ったら、涙が出
てきちゃいました」
そう。
ママは、これまでTさんと数回会う中で、お姉さんに対
するこの気持ちを聞いていた。
子供の頃は嫉妬していたこと。
ケンカばかりしていたこと。
大人になってからは用事がある以外は連絡もとらないで
(どちらかというと)疎遠になっていること。
お母さんもお姉さんをひいきしていること。
だから、胎児期退行のとき、勝手に口が動いて、
お姉さんの気持ちを感じてみて下さいって、言ったのだ
と思う。
後日、Tさんは面白いことを言った。
ある日実家に帰ったら、たまたまお姉さんもやってきた。
お母さんはお姉さんをひいきしているはず・・・と思って
いたのに、あれ? そんなことないみたい?
私、今まで、なんでそんな風に思ってたんだろう?
それにお姉さんも私に普通に接してるし?
別に二人の関係がギクシャクもしてない。
長い間、自分が勝手にそういう風に思いこんでいただけ?
とても不思議だったと言った。
親子間にも、姉妹間にも、今まで自分が思い込んでいた
ようなわだかまりなど、ないんだって。
ママはもしかしたら、あの時ママの口を借りたのは、お
姉さんだったかもなあ、って思った。
「その日の夜に、お姉さんがたまたま携帯の誤操作で
連絡してくるなんて、出来すぎてるものね?」
そして、Tさんの変化はこれだけに留まらなかった。
幼児期退行、インナーチャイルドと続けて行ううちに、Tさんの
「パンドラの箱」が開いたのだ。
セッションの時は「子供のころの印象に残っていることは?」って
聞いても、「別に」「何も」と答えていたのに、
ある日、シャワーを浴びていたら、小さい頃の記憶が次から次へと
出てきて、涙が溢れてきたんだって。
自分でも驚いたって言ってた!
それに、小さい頃の自分を抱きしめて、愛のある言葉をかける、
いわゆる「インナーチャイルド」の癒しをやっていても、泣けてきた
のだそう。
小さかった頃の傷ついた感情。
それを無意識のうちに箱に入れ、しっかりふたをして、心の奥深
いところにひっそりと置き忘れている。
その「パンドラの箱」が開いた。
ママにも経験があるけど、一度その箱が開くと、後から後から子供
の頃の記憶が溢れ出てくる。
そして、記憶と一緒に、その時の感情も込みあげてくる。
涙が止まらなくなるけど、「涙」にはすごい浄化作用がある。
だから、泣くだけ泣くと、心の奥深くにあった「つかえ」がとれるのだ。
それ以降、Tさんは顔がどんどん輝いてきて、
それと同時に、ヒプノのセッションにも変化が現れ始めた。
5回目のレッスンではサブパーソナリティを勉強した。
自分の中にはいろんなパーソナリティがいる。
短気な人、
すぐ不安になる人、
いつも自信がない人、等々。
自分の気になるところはある?って聞くと、Tさんは、
「ひとりで行動を起こせないところ」と言った。
他人の中に入っていくのが怖い。不安。
たとえば、見たいビデオがあっても、レンタルビデオ店に行くのは
嫌なので、通販で「買って」見るのだという。
本も。図書館で借りたりはしない。
通販で「買う」んだって。
習い事なんてもってのほかで、ひとりで知らない人たちの中へは
入って行けないのだとか。
ママと一緒の時は、屈託なく笑い、普通におしゃべりしているように
見えるのに・・・。
「あれ? でもさ~」
ママは不思議に思った。
「よく私のところに一人で来たよね?」
やっぱりそう思いますよね?、ってTさんは言った。
しかも、Tさんが予約を入れてきたのは、ママがHP(らしきもの)を
作って、1週間足らずのときだった。
まるで、待ってました!とばかりに連絡をくれたのだった。
「マサコさんのところに伺うのも、ものすごく大変でした。
予約を入れているにもかかわらず、どうしよう・・・、やっぱ
りやめた方が・・・、とか考えて・・・」
うん、うん。 わかる気が・・・。
でも、そういうときって、大抵、目に見えざる力が働いてそういう風に
動かしてるからなあ、ってママは思った。
「結果的にとても良かったので、やっぱり(来て)正し
かったのだと思います」とTさんは言った。
「けど・・・」
「いつも、新しいことをしたり、知らない人に会うのは
怖くて、しんどいのは確かです」
そっかあ・・・。
よし! じゃあ、今日はそのパーソナリティに会いに行ってみよう
か?
というわけで、ママはそのパーソナリティに会いに行く誘導をした。
その人がいるお部屋を想定してみる。
お部屋の前まで誘導すると、Tさんが、
「鉄の扉です・・・・。 固そう・・・」と言ったので、入れるかなあ?と
ちょっと不安に思った。
「確か、インナーチャイルドのときも、鉄の扉で鍵がかかっていて
入れなかったんだよね?」
「うん、そうなの、エフちゃん。
でもね! 今回は入れたの!
入れたんだけど・・・。誰もいないの。
気配は感じるって言うんだけど、姿が見えなくて」
呼んでみたり、いろいろ試したけど、駄目だったので、ママは別の
場面設定に変えてみた。
今度はTさんが部屋の中にいて、パーソナリティを招きいれる
ことにした。
(見えないパーソナリティに向かって)「部屋に入って来て下さい」と
呼びかけてみる。
「なんだか、白いもやもやしたものが入ってきました」、とTさんが言
った。
あなたはどんなキャラクターの人?って聞いてみる。
(人に会うと)ドキドキするパーソナリティだという。
Tさんが何歳のときから一緒にいるの?と聞くと、
「5歳から」という答えが返ってきた。
5歳のときに、とても緊張してドキドキすることが起きたのだという。
その場面へ、と誘導すると、Tさんが「気持ち悪くなった」と言った。
そして、まっくらになってしまった。
何かのトラウマがあるのかもしれないが、その場面へは行けそうも
なかった。
ブロックが強いのか、まだ見るタイミングではないのか・・・。
Tさんに、部屋の外に、誰か、他のパーソナリティがいるような
感じがしますか?とママは聞いた。
「ハイ」と答えたが、「その人には会いたくない」と言った。
ううん・・・・そっかあ・・。
Tさんは、何故かお風呂の排水溝が怖いのだと言った。
それで、その原因を究明すべく、いくつかの場面を見に行った。
最後に、「好きな場所へ」と誘導する。
今日のセッションはちょっとヘビーだったかもしれないから、
少しリラックスしてもらおうと思ったのだ。
Tさんは「木がいっぱいあるところへ行きたい」と言った。
そして、いつものように森へ行った。
気分はどお?って聞くと、
「気持ちいい」という答えが返ってきた。
Tさんは森のようなところへ行くと、とてもリラックスできるらしく、
大抵何かが見える。
この時も、「白いウサギがいます!」と言った。
「私のそばへ寄ってきました」
そして、「とても触り心地がいい」と言った。
ママがウサギの目を見て?と言うと、
Tさんは「あっ・・・! うちのワンちゃんです!」と言った。
Tさんは犬を2匹飼っているが、そのうちの1匹だという。
生まれ変わってきてるんだね?
「うん、ねえ、エフちゃん、Tさんは断片的ではあるけど、どんどん
見えるようになってきたの」
固かった心が、少しずつほぐれてきているような気がした。
それに、Tさんとはマンツーマンのレッスンだったから、
時間がたっぷりあった。
だから、ヒプノの勉強以外にもいろんなことをやった。
アロマテラピーのこと。
水の波動の実験。
太尾さんのセミナーで聞いてきた動物のこと。
エネルギーの話。
等々。
Tさんはいつも目を輝かせて聞いてくれた。
ある時は、説明しているママを見てクスクス笑うので、
「え?」って聞くと、
「マサコさん、楽しそうに教えるな~と思って」
ママは赤面したけど、図星だった。
教えることが楽しくてたまらなかったから。
それにTさんのことがまるで妹のようにかわいくて仕方がなかった。
「っていうか、妹だった過去世もあるから、そのときの気持ちが
蘇ってきてたのかなあ?」
ママはそう言って笑った。
6回目のレッスンは、ハイヤーセルフとの対話である。
上手くハイヤーセルフに会えるかな、とママはまたもや不安。
リラクゼーションの後で、ハイヤーセルフに会いに行く誘導をするん
だけど、実は、ママのリラクゼーションは毎回微妙に違う。
アドリブで行う部分も多い。
この時も、Tさんが安心して、潜在意識にすべて任せるような気持
ちでいて欲しかったので、それらしき言葉を随所に盛り込んでみた。
そして、Tさんが最もリラックスできる「森」へと誘導し、その森の中
で、ハイヤーセルフと対面することに・・・。
「最初は会えなかったの」と、ママは言った。
「それで、またイメージ法とかを使いながら、あの手この手で頑張っ
てみたの。そしたら、Tさんが暖かい光を感じる、って言ったの!
その光に、Tさんに対して何かメッセージを下さい、って頼んだら、
” もっと自信を持ちなさい” って。
で、気になってたことを聞いてみたの。
自信を持つために、幼児期退行はもっと必要ですか?って。
そしたら、いいえ、って言われた。
インナーチャイルドのセッションは?って聞いたら、
インナーチャイルドの癒しを、あと1年位は続けなさいって」
そんな風に答えてくれたんだ?
「うん。そうだよ。それでね、エフちゃん、その光に向かって
あなたは誰? ハイヤーセルフなの?って聞いたの」
「ハイ」という答えが返ってきた。
「Tさんを抱きしめて、ヒーリングしてあげて下さい」ってママは頼ん
だ。
「あたたかい・・・・」ってTさんは呟いた。
そして、しばらくしたら、「光が消えました」って。
この後、ママはTさんが飼っている2匹のワンちゃんを呼んでみた。
「ところがね、この日は出てこなかったの」
「今日は何も話すことがないの?」ってママが聞くと、
Tさんが、「なさそうです」と答えた。
面白かったのは、ここから。
Tさんは人と接するのが苦手だ。
だけど、実は「人と接する」ことを学ぶのが、今生の目的のひとつに
なっているようなのだ。
ワンちゃんはそれをサポートするために来たのだという。
「彼女は、知らない人の中に飛び込むこと、例えば何か習い事をす
るとか、そういうことに不安があるみたいなの。
その原因は、過去世にあるの?」
「今生の幼児期」にある、とワンちゃんは答えた。
そうなんだ・・・。
だから、インナーチャイルドの癒しを続けなさい、って言ったんだね。
「あと4回で勉強は終わるんだけど、その後、何をやればいいの?」
スピリチュアルの勉強を続けていくこと。
自分で「知る」ことが大事だから。
ワンちゃんはそんな風に言った。
ママは、今度は金髪の男の子に聞いてみた。
「あなたの生まれ変わりのTさんに、メッセージがありますか?」
男の子: もっと自由になって。
ママ: それは仕事のこと? 私生活のこと?
男の子: どっちも。彼女は自分で(自分を)縛っている。
ママ: まず、何から変えていけばいい?
男の子: 行動に移していくこと。
ママ: そのためには、自信をつけなければいけないけど、どうすれ
ば?
男の子: 面倒でも外に出て行くこと。
ママ: それは習い事とかをするという意味? それとも、休みの日
に、家にこもっていないで、外に出かけること?
男の子: 後者の方。
ママは思いついて、こんなことも聞いてみた。
ママ: (Tさんが)ストレスがたまったり、憂鬱になった時に癒される
場所は?
男の子: 木が沢山あるところ。 木が癒してくれる。
ママ、なんでそんなこと、聞いたの?
「だってね、エフちゃん、
日々の生活の中でも、人と関わらなくちゃいけないことって、いっぱ
いあるでしょう?
人と接することが苦手な人にとっては、それだけでもストレスになる
んじゃないかなあと思って。
それなのに、休みの日もなるべく外に出なさい、っていうから・・・」
だから、そんな時のために、「癒される場所」を聞いておきたかった
のだ。
最後に、ママは「過去世で私との関わりがありましたか?」って
聞いた。
そしたら?
「はい、何回もありました」って。
7回目のレッスン。
いよいよ過去世退行を勉強する日。
ママは不安でいっぱいだった。
これまでのレッスンはアドリブでイメージ法を取り入れたりして、
何とかこなすことができた。
でも、過去世に至っては、
「過去世をイメージして下さい」って、できない・・・・。
前回のレッスンでは金髪の過去世の男の子が出て来たけど、
あれはたまたま流れでそうなっただけだし・・・。
今回は最初から「過去世へ」って誘導するわけだから・・・。
ママは前日から、
「明日、どうしよう、どうしよう」って心配してた。
ところが。
過去世退行の説明をして、いざ、デモを始めると、なんとTさんは
すんなり過去世へと入って行った。
「最初に、足元を見て下さい、って言ったら、”真っ白です” って
答えたから、ああ、やっぱり駄目なのかな・・・、何も見えないのか
な・・・・って、思ったの。
そしたら、白い、雪景色だったの!」
雪の中に、長靴、ズボン、分厚い上着、黒い帽子を被った男の人
が立っていた。 髪も目も黒い。
手には猟銃を持っている。
ママはドキドキしながら、「次の場面へ」と誘導した。
行けるかな・・・。
今までの例だと少し見えても、急に暗くなったりしてたし・・・。
でも、ちゃんと場面が展開した。
その後も、誘導通りにストーリーは滞ることなく進んでいった。
「重要な場面」へもちゃんと行ったし、「亡くなる場面」へも行ったし、
「中間世」へも行けた。
もうママは感無量だった。
クライアントさんで3回、生徒で6回のセッションを経て、
ようやく10回目にして、過去世へ!
「しかも、すごいことに、”見えるようになった” どころか、過去世の
場所や年代まで答えられたの!」
初回からよく見える人でも、年代や名前まですんなり答えられる
人はそれほど多くないのに・・・。
ママは本当に驚いた。
今までのTさんとはまるで別人のようだった。
さて、次のレッスンも過去世退行である。
この時も、Tさんはすんなりと過去世を見ることができた。
というか、もう明らかに変化を遂げていて、過去世に関わらず、
ヒプノで見たいものは何でも見れるようになっていたんだと思う。
この時は日本で暮らす男性の過去世だった。
大きな日本家屋。長い廊下。 障子。
畳の部屋に、ちゃぶ台。
夕飯の場面では、焼き魚に、ごはん、お味噌汁。
家族は、両親と弟。
自分の部屋には机。
勉強が大好きで楽しいと言った。
そして、20歳の場面。
正座をして、お父さんと話をしている。
お父さんはとても寂しそうな顔をしている。
どんな話をしているの?とママが聞いた。
「かたい話・・・。戦争の話です」と、Tさんが答えた。
そして、こう付け加えた。
「出征するんです・・・。 (行くのが)こわい・・・」
25歳では、軍隊に入って、野外訓練を受けている場面が見えた。
まだ戦争には行ってない、と言った。
30歳の場面へ誘導すると、何も見えなかった。
「こういう時は、たいてい亡くなっているの」と、ママは言った。
年齢を戻してみる。
27、8歳だろうか。
「海の上にいます。 乗っている船が敵に爆撃されています。
みんな、死んでいってる・・・。
逃げたいけど、傷だらけで・・・、もう、駄目です・・・」
「家族に会いたい・・・・。家に帰りたい・・・」
そして、息を引き取った。
思い残したことがあったのか聞いてみると、
「結局、(この人生では)何もできないまま終わってしまった。
もっと勉強をしたかった。家族とも、もっとずっと一緒に過ごしたかっ
た」と言った。
彼の命が散ったのは、1920年代、太平洋の海の上である。
苗字は「佐藤」、名前は、上に「まさ」が付く名なのだという。
その時の弟は、今生の妹さんに生まれ変わっている。
今度生まれ変わったら、どんな人生にしたい?ってママは聞いた。
「戦争がなくて、もっと自由で、自分のやりたいこと、進みたい方向
に進んでいけるような人生」
ハイヤーセルフはこう言った。
人を恨んだりしてはいけないよ、って。
人を恨む?どういう意味だろう?ってママは思った。
「恨む、って?」
すると、Tさん(の過去世)が、
「悔しかった・・」と言って、涙を流した。
「自分の意志ではないのに戦地に行かされ、見ず知らずの人に殺さ
れるなんて!」
ああ・・・、そうか!
そういうことだったんだ!
ママはようやくわかった。
学問をやりたかった。
家族と過ごしたかった。
それなのに、強制的に戦争に駆り出され、
何ひとつ悪いことをしたわけでもないのに、
見ず知らずの人から虫けらのように命を奪われ、
人生を断ち切られてしまった。
彼は怒りと恨みの念を持って死んでいったのだ。
だから、Tさんは「人が苦手」なんだ・・・。
「人」に恨みを持っているから。
「人」に怒りを感じるから。
過去世の深い深い心の傷を引きずっているんだ・・・。
そして、ハイヤーセルフは、
「そのことを恨んではいけないよ」と。
ママは、ハイヤーセルフに、
「この時のことが、今のTさんに影響を及ぼしているんですね?」と
確認してみる。
そう。でも、今日、こうやってセッションを行ったことで、少し心の傷が
癒えるはず、と教えてくれた。
すごい過去世だね、ママ・・・。
「うん。ねえ、エフちゃん、人間って、本当にいろんな人生を積み
重ねながら生きてるんだね・・・・。
それぞれの人生で残したり、閉じ込めてしまった感情がこうやって
持ち越されて、影響してたりするんだね・・・」
ママは、セッションをやるたびに、
人間が繰り返し生まれ変わっては、いろんな「想い」を体験してい
る様子を目の当たりにして、「愛しい」感情で胸が一杯になるのだ
と言った。
そして、目を潤ませながら、私を見る。
「みんな、輪廻転生を繰り返してるんだものね・・・。
エフちゃんとだって、こうやってまた再会してるんだものね・・・」
このあと、ママがどんな行動を起こすかは、容易に想像がつく。
私をぎゅうって抱きしめて、こう言うの。
「愛してる!」って。
・・・・・・・・。
ほら、やっぱり!
いよいよ、9回目。
残すところ、あと2回のレッスンとなった。
ママは、気になるサブパーソナリティを一同に集めることにした。
「何でも、思い当たることを言ってみて?」とTさんを促す。
出てきたのは、
アレルギー性鼻炎のこと
人前で本などを読むのが恥ずかしいこと
海が怖いこと
何かを借りると、期日までに返さなきゃとプレッシャーになること
職場でイラつく人がいること
行動に移せなくて焦ること
人に批判的なこと、などだった。
リラクゼーションの誘導のあと、ママはこれらのサブパーソナリティ
たちを、順番に呼び出してみる。
ハイヤーセルフも呼んでおく。
最初にクライアントとして来たときは、誰を呼んでみても、返事もな
く、誰も現れなかった。
でも、今回は、面白いように出てきた。
ママは、嬉しくてしようがない。
それぞれのパーソナリティがどんな姿をしているのか、聞いてみた。
「人に批判的な人」は、黄緑色で透けて見えるのだという。
「期日までに返さなきゃとプレッシャーになる人」は、三日月の形。
「人前で本などを読むのが恥ずかしい人」は、傘の形。
「海が怖い人」は、ブラシの形。
ハイヤーセルフは、形ではなく、「光そのもの」だと言った。
ママは、最初に、「人前で本などを読むのが恥ずかしい人」に質問
をした。
「なぜ、恥ずかしいの?」って。
みんながいると緊張しちゃう、という返事が返って来た。
いつから、そうなの?
気が付いたら、そうなってた・・・。
では、最初に緊張した場面へ行って下さい。
すると、小学校1年生の場面が現れた。
そのとき、Tさんにとって、とても恥ずかしい思いをする出来事が
起きた。みんながTさんに注目した。
「恥ずかしい!みんなに見られてる!」
そして、この日以降、Tさんの中に、「人に注目されたくない」という
思い(パーソナリティ)が生まれたのだった。
そっか・・・。 みんなの前で本を読むということは、みんなに注目さ
れるから・・・。 だから、嫌なんだ。
幼児期のトラウマが原因だった。
この場面は、Tさんの意向を聞いた上で、「書き換え」を行った。
「アレルギー性鼻炎」、「海が怖い」など、他のパーソナリティたち
とも、順次、話をしていく。
そして、最後に、ハイヤーセルフに聞いてみた。
ママ: Tさんの心の問題を改善するにはどうしたらいいんですか?
― 行動範囲を広げていくこと。自分を癒すこと。
もっと好きなこと、やりたいことをやっていくこと。
自分を押さえつけるのが、一番だめ。
そういえば、さっき、「アレルギー性鼻炎」さんに、どんなことをやり
たいか聞いたら、「たくさん外に出て行きたい、友達もいっぱい欲
しい」って言ってたっけ・・・。
ママは思いついて、「それを実行したときの、3年後の未来」へと
誘導してみた。
すると・・・。
(3年後の自分は)、
「外でみんなとバーベキューをしています。いろんな人がいます。
(私は)とても楽しくて、幸せそうです」とTさんが言った。
そういう状況になるために、何をやったの?ってママが聞いた。
「思い切って行動に出たんです。陶芸とか、スポーツとか、自分が
やりたいなあって思いついたものをやっていったんです」
と、3年後のTさんが答えた。
それを聞いて、どうですか?ってママが 「行動に移せなくて焦る」
さんに問いかけた。
「でも・・・、知らない人に会うのは怖い」
と、「海がこわい」さんが、「でも、やってみなきゃわからないよ」って
発言した。
そして、「期日にプレッシャーがある」さんが、
「怖いと思わなきゃいい」と言った。
「わかってるけど・・・、でも・・・・」と、
「行動に移せない」さんが口ごもる。
ママが、「あなたはいつからTさんの中にいるの?」と聞いた。
「最初から」
最初から?
「うん。生まれるときから」
生まれる時、っていつだろう?
ママは、「では、その場面へ行って下さい」、と誘導する。
「ねえねえ、エフちゃん・・・」
「前にも言ったけど、本当は、時間って、直線じゃないじゃない?
今日の『虹色の光の玉』が、お母さんのお腹の中にいたTさんに
実際に届いて、Tさんは生まれてからず~っとその光の玉と一緒に
過ごしてきた、っていう人生になってるといいなあ・・・」
私はママが以前言っていたことを思い出した。
Tさんの人生の歩みを巻尺に例えて、今いる場所が50センチの
所だとする。
Tさんがお母さんのお腹にいるのが0センチの場所だったとする。
ママが今日、ヒプノで0センチと、50センチの2か所をそれぞれ
指でつまんで、その両手を合わせる。
そして、光の玉を渡す。
その後、両手を元の場所に戻して、つまんでいた指を離す。
そうすると・・・。
今、目の前にいるTさんの人生は、胎児の頃にプレゼントされた
光の玉と一緒に生きてきた人生にすり変わっている。
確かめようがないけど、でも、ママはそれを願わずにはいられな
かった。
Tさんの人生はとても大変だっただろうから。
「必要だったから」
「マサコさんは・・・・・」
Tさんは、ママとの過去世を見ているようだった。
「マサコさんは(その頃)ヒーラーなの」
その頃?いつだろう・・・・・。
「古代ギリシャ・・・。すごく古い時代」
ヒーラーって、どんなことをやってるの?
「横になった人の体に手を当ててる」
ヒーリングをしてるんだ・・・。
「私は近所に住む(小さい)女の子で・・・・。
毎日毎日、マサコさんの所へ行って、ヒーリングしているのを、そば
でずっと見てる。
マサコさんは、いつも私に優しくしてくれる」
Tさんは、ママがヒーリング(たぶん、体調の悪い人を治している)
するのを見ながら、すごいなあ、自分もいつかこういう風になりたい
なあ、って子供心に思っているのだという。
そして、「いつかマサコさんと一緒にこうやってヒーリングができた
らなあ、って」
それが願いなのだと。
いつか、一緒に・・・。
だから? だから、こうやって、2000年近くもの時を経て、会いに
きてくれたの?
そのときの「想い」で、会いに来てくれたの?
だから、あのとき、「ヒプノ、習いたいです!」って言ってくれたの?
ママは胸がいっぱいになった。
目の前のTさんの意識はタイムスリップして、古いギリシャの時代
に戻っている。
その時の小さな女の子に戻って、過去世の私たちのことを実況中
継してくれている。
(それゆえ、Tさんの会話は「現在形」なのだ)
そして、ママには、Tさんが見ている場面は、見えないけれど、
でも、その女の子の感情はそのままママにも流れ込んできた。
Tさんが、ヒーリングをしているママのそばで、ワクワクしながら
憧れを持ちつつ見つめているのも
いつの日か自分も同じようなことができるようになって、一緒にやれ
たらなあって思っているのも、
ママのことをとても慕ってくれているのも。
まるでママの意識が一瞬のうちに同じ時代に戻って、Tさんの意
識と同化したかのように感じとってしまった。
Tさんとの勉強は、ママにとっても、この上ない恩恵をもたらした。
毎回毎回、ヒプノで何も見えないTさんに、何とかしなくちゃと試行
錯誤することで、イメージ法を思いついたからだ。
ヒプノで「見える」っていうと、勝手に何かが見えてくると思いがち。
だから、何も見えてこない、浮かんでこないと、焦る人も多い。
特に初めてだと、「何が見えるんだろう?」って思わず、考えちゃった
り、あるいはわくわく期待したりして、かえって見えなかったりする。
「考えちゃう、ってことは、左脳が働いてるからね~。
左脳が働いてる、ってことは顕在意識が起きてるってことだから」
つまり、潜在意識に繋がっていないので、「見えない」のだ。
それに、初めての人にとっては、ヒプノが「未知の世界」なので
「見える」という感覚自体、どういうものなのかわからない、というの
も、見えないことの大きな要因だと思う。
だから、ママはできれば3回は受けて下さい、ってお願いする。
2回目には、どんな誘導をするのかとか、手順とかをわかっている
ので、見えやすくなる。
やっぱり「慣れ」の力は大きい。
それでもTさんの場合はずっと見えなくて、ママは本当に悩んでい
た。せっかく習ってくれているのに、見えないと、ヒプノがどんなもの
なのか、どんなことができるのかを教えることができない。
苦肉の策で、自らイメージするように促したんだけど、まさかこんな
に功を奏するとは思ってもみなかった。
セラピストを目指す人の中には、クライアントさんが来て、何も見え
なかったらどうしようと心配したり、いざセッションをやって、
「まっくらです」と言われると、困ってその地点から進めなくなる人も
いる。
そういう時にはこの方法は打ってつけかもしれない、ってママは
思った。
(もちろん、何も見えないときには、本人のブロックがある場合、
今は見るタイミングでない場合など、他にもさまざまな理由が
あるんだけど)
最後のレッスンが終わって駅まで送って行くとき、ママはなんだか
寂しくて、心にぽっかり穴が開いたような気持ちになった。
それほどTさんのことがかわいくて、仕方がなかったんだって。
「エフちゃん、レイキのアチューンメントのときに、ママはいくつかの
過去世を断片的に見せられたでしょう?」
うん、後日、ヒプノの教室で練習をするたびに、その過去世のひとつ
ひとつが詳しく出てきたんだったよね?
「そう。でも、そのときに、ひとつだけ出てこなかったものがあったの。
映像はみえなかったんだけど、”姉さま! 姉さま!”って、誰かが
ママのことを呼んでるの。
ハイヤーセフルは、今生ではまだその人と出会っていないって言っ
た。助けるべき時が来たら、出会う、って」
うん、それで?
ママが私を見た。
「それが、Tさんだったの」
え~っ!!
Tさんが過去に何度もママと姉妹だったことはわかっていたんだって。
会うたびに、妹に対するような愛しい気持ちが蘇ってきていたから。